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私は日本家屋の佇まいが好きである。
縁側にお気に入りの椅子を置いて、ひなたぼっこをしていたい。
でも洋風の家が嫌かというと、そういうわけではない。
イギリスのマナーハウスを思わせるような、木としっくいでできた重厚な家も好き。
昔のいわゆる「洋館」と言えばいいだろうか。
ポーチがあって、ホールがあって、シックなガラスの照明器具が似合う家。
床には木が張りつめてあって、できればドアも木でできていてほしい。
もしかしたら、品のいいステンドグラスがはまった窓もあるかもしれない。
屋根裏部屋では、斜めになった壁に窓がくりぬいてあって、そこから外を眺めるのだ。
屋根裏部屋には、このあいだ、大奮発して買った大きな木馬を置いておこう。
アジアふうの家も好き。
とはいっても、現実的なのは、植民地化されていた土地で建てられたような、ヨーロッパとアジアがまざった家。
薄い布のかかった万影つきのベッドで、マダム気分で昼寝をしたい。
一人暮らしなら、べつに集合住宅でもいい。
パリのアパルトマンみたいな、こぢんまりしていて、でもあたたかみのある部屋。
猫脚つきのバスタブにタイルの洗面所。
ベランダが広くて、そこで園芸をしたりブランチを食べたりできたらすてきだ。
いくらでも、好きな家があげられる。
どんな家でも、好きになれる。
どんな家にでも、住んでみたい。
たったひとつの「マイホーム」にこだわらない私か、中古住宅や借家がいいね、と言うのは、そういう気持ちのせいもある。
たったひとつの「マイホーム」にこだわって、その家に執着しつづけるよりも、与えられた選択肢のなかから好きな家をみつけだして、それを住みこなしていくほうが楽しい。
その楽しみを、なんども味わえるなら、そのほうがずっといい。
ごくひと握りのお金持ちはともかく、私たちはいちどに一軒の家しか持てない。
それなら、引っ越す必要ができたときや、人生の転機のときに、軽やかに家を選びなおしていけるほうがいい。
そういう世の中になれば、いまの、それぞれの家が個性を叫んでいるような住宅街ではなくて、地域ごとの特徴を大切にし、
古い家をていねいに住み継いでいく街になっていくのではないだろうか。
ライフステージという考え方がある。
人生には、親に養われている時期、社会人として一人で暮らしている時期、結婚して二人で暮らしている時期、子どもが生まれて育てている時期、
子どもが巣立って夫婦二人に戻った時期、それから老いを迎えた時期……いろいろなステージがあって、そのステージごとに暮らし方は変わってくる。
当然、その人の経済状態も違ってくる。
人は、たとえばファッションの好みで、そういう変化を実感する。
若い頃は黒い服が似合っても母親になったら淡いベージュやピンクが似合うようになった。
もっと年をとったら紫や茶色が好きになった。
またたとえば、行動パターンで感じることもあるだろう。
若い頃は夜な夜な飲み歩いていたけれど、結婚したらお金も足りないし、家で子どもが寝たあとに妻と飲むようになった。
中年には接待で毎晩料亭に通い、その後はまた妻と話しながら飲むのが楽しみになった。
では、家については、どうだろう。
家の使い方が変わってきているな。
前はこうだったけど、いまはこうなったな。
そのように、ちゃんと意識している人は、どのくらいいるだろう。
家のことは老後になって考えればいい?都市の郊外に庭つき一戸建てを買った人たちが、六十代くらいになってきて、
都心のマンションに引っ越すという話を、1990年代なかばからよく耳にするようになった。
バブル期の土地高騰がおさまって、都心にマンションがたくさんできはじめたせいもある。
当時、話を聞くと、だいたいの人が口をそろえて「子どもが独立して、部屋があまっているんですよ」
「都心でお芝居をみたり、食事をしたりしても、家に帰るのに一時間もかかるから、たいへんで」「留守にすると、安全が心配で」などと言っていた。
その頃から、老後は便利な都心で、安心なマンションに暮らす、といった考え方が広がりはじめていたように思う。
一方で、「老後は田舎暮らしを」「老後は海外に移住を」という夢を描く人たちも、確実にいる。
老後については、みなさん、暮らしやすい家について考えているらしい。
それでも、それ以前の「現役」時代には、それほど真剣に考えているようには見えない。
家を買うまでは、通勤に便利な場所やいい学校の近くに、払える範囲内での家賃の物件を探す。
家を買うとなったら、月々払えるローンの額をまず考え、その金額でどんな物件が、どこに買えるかを考える。
借家は仮住まいにすぎず、家はまず手に入れるもの。
家を手に入れてしまったら、あとはその家に住みつづけるもの。
その程度にしか考えていないのではないか。
暮らしやすい家に住み替える家について、考えを変えてみてはどうだろう。
家は獲得する資産ではなくて、そのときそのとき、暮らしやすい場所にみつけていく居場所。
新婚夫婦二人が住むには、小さくてもお互いの仕事や行動に便利な場所がいいだろう。
夜遅くまで開いているスーパーや書店が近くにあるともっといい。
子どもが生まれたら、庭があって近所には川か山か公園か海があるような環境がいいところがいい。
部屋数も、広さも、ゆとりがあるほうがいい。
年をとったら、子ども部屋を空き部屋にしておくとさびしいし、危険でもある。
夫婦別々の部屋が持てる程度の広さのところがよさそうだ。
もちろん、一人暮らしの人にも、ずっと親と同居している人にも、それぞれライフステージがある。
そのときどきで、もっと軽やかに住みやすいところに住み替えていってもいいのではないだろうか。
いちいち持ち家を買い替えてもいいわけだけれど、それだけで「引っ越し貧乏」になりかねない。
ローンの借り換えや不動産取得税や……。
ただ、暮らしやすい思いをするために、わずらわしいことが多すぎる。
だから、軽やかに引っ越せない人も、じつは多いのではないか。
私は、誰もが、まず「暮らしやすい暮らし」を優先できるためにも、もっと質のよい中古住宅や借家が増えたほうがいいと思うのだ。
もちろん、ひとつの家をたいせつに守っていく生き方もすてきだと思う。
そんな家に出会えた人は、しあわせだ。
どちらでなければならない、というものではない。
住み替え住み替えしながら、ひとつの家をみんなで守り育てていくのも、ひとつの家を一人で守って思いをかけていくのも、結局は同じことなのかもしれない。
「ちょうどよい狭さ」が暮らしいいLちゃんハウスではあきたらない。
小学生の頃から家の間取りや家具の配置を考えるのが好きだった私は、お絵かき帳を広げては「理想のおうち」を描いては消し、描いては消ししていた。
その時ちょうどLちゃんハウス全盛期。
わが家でも姉とともにハウスを広げ、「トントン、Lちゃん、こんにちは」「あら、Iちゃん、いらっしゃい。
どうぞ応接間へ」「まあ、すてきなソファですね」などと遊んでいたけれど、私にはLちゃんハウスではあきたらないところがあったらしい。
そもそも、Lちゃんハウスにはたった二部屋しかなかったのだ。
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